3. 超臨界流体クロマトグラフィーを用いた高分子の分離精製と,それによって得られる「均一ポリマー」の構造と物性に関する研究
低分子化合物は,蒸留や再結晶によって精製できます。しかし,多くの合成高分子は,分子量の少しずつ異なる分子種(重合同族体)の混合物なので,単一の分子種を得ることが困難です。このため,合成高分子の構造と物性を研究するときには常に「あいまいさ」がつきまといます。私たちは均一ポリマーを実際に単離して,これまで明らかにされてこなかった合成高分子の構造と物性を調べようとしています。
超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)によるポリマーの重合度分別 |
二酸化炭素は比較的低い温度と圧力(31.0℃以上, 72.8 atm以上)で超臨界流体になります。超臨界流体に溶解したポリマー分子は,溶液中に比べて2桁近く速く拡散するので,これを利用したクロマトグラフィー(SFC)を用いれば,まるで低分子化合物を分離しているような高い分離効率が得られます。ただし,どんなポリマーでも効率よく分離できるわけではありません。リビング重合などの精密重合法で,あらかじめ分子量と化学構造の揃ったポリマーを合成する必要があります。
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SFCによるポリメタクリル酸メチルの分別で得られた50量体のクロマトグラム |
化学構造に分布のない「均一ポリマー」は結晶性が高く,融解やガラス転移などの相転移がシャープであるなど,通常の合成高分子に見られない特異な物性を示します。均一ポリマーは,高分子科学の基礎研究に重要なだけでなく,質量分析などの標準物質としても役立ちます。
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オキシメチレンジアセタール10量体の単結晶X線構造解析 |
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