2. 核磁気共鳴分光法(NMR)とクロマトグラフィーを用いた高分子キャラクタリゼーション
NMRとクロマトグラフィーは分析化学の基本的な方法として発展してきました。これらの方法を合成高分子の構造決定(特性解析ないしキャラクタリゼーション)に役立てるには,低分子や生体高分子の場合とは少し異なるアプローチが必要です。
ほとんどの合成高分子は,分子量や化学構造(共重合組成・立体規則性など)の異なる無数の化学種の混合物です。混合物のままで分子量や化学構造を測定しても,ふつうは平均値しかわかりません。クロマトグラフィーを使って混合物を分離し,分子量や化学構造の「分布」を調べなければ高分子の本質を理解することができません。
私たちは,高分子の分離に適したクロマトグラフィーの新しい方法を研究しています。たとえば,分子量と共重合組成の平均値が等しくても,組成の分布が異なるポリマーの分離に成功しました(右図)。この方法は,半導体の微細加工に使用されるレジストポリマーの性能評価に応用できることがわかっています。
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臨界吸着条件(CAP)で組成分布
の異なる共重合体A,Bを分離する |
混合物のNMRスペクトルを分子のサイズで分離する方法 |
クロマトグラフィーで実際に混合物を分離することも大切ですが,混合物のまま化学構造の分布が測定できれば便利に違いありません。パルス磁場勾配NMR(DOSY)という新しい方法を使えば,共重合組成などの化学構造が分子サイズとともに変化する様子が測定できるようになってきました。
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エチレン-プロピレンゴムのパルス磁場勾配NMR |
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