Ute Laboratory - Polymer Synthesis and Characterization
 

1. ビニルモノマーのラジカル重合による高分子設計と構造規制  

 

 ラジカル重合はポリマー合成の手法として工業的にも広く用いられています。しかし、ラジカル活性種の反応性が非常に高いために、反応を制御して望み通りの構造を持つポリマーを合成することは難しいとされています。私たちは重合条件を工夫することで、構造の制御されたポリマーの合成をめざしています。  
 

立体構造の制御されたポリマーをつくる

 立体規則性がポリマー物性に大きな影響を及ぼすことはよく知られています。そのため立体特異性重合は高分子化学の重要な分野の一つとしてみなされてきました。しかし、成長活性種の反応性が高いために、ラジカル重合で立体構造を制御することは難しいと考えられてきました。

 私たちは、一般に弱い相互作用であると言われている水素結合を利用することで、ラジカル重合でも得られるポリマーの立体構造が制御できることを明らかにしてきました。これまでに、モノマーと添加剤との組合せを適切に選択することで、イソタクチックからシンジオタクチックまでの幅広い立体構造を有するポリマーの合成に成功しています。


代表的な立体規則性ポリマーの模式図


開始剤組込み(共)重合で可溶性高分岐ポリマーをつくる

 これまでに多種多様な高分子材料が合成され、多方面で利用されてきました。その多くは線状ポリマーを基盤としています。しかし、最近になってデンドリマーや高分岐ポリマーなどのいわゆる樹木状ポリマーが注目を集めるようになってきました。というのも、これらの樹木状ポリマーは、球形を呈すること、多数の末端基を有すること、分子内には空隙が存在すること、溶解性が高いこと、溶液粘度が極めて低いこと、結晶化し難いことなど、線状ポリマーにはない多くの特性を有しているからです。
 一般にジビニルモノマーをラジカル(共)重合させると、架橋が進み、溶媒に不溶な3次元ポリマーが得られます。私たちは、ジビニルモノマーのラジカル(共)重合に高濃度の開始剤を用いることで、通常の溶媒に可溶な樹木状高分岐ポリマーが合成できることを見出しました。得られたポリマー分子には多数の開始剤断片が組込まれていたことから、開始剤組込み(共)重合と名付けています。この方法はラジカル(共)重合するモノマーすべてに適用できるため、樹木状高分岐ポリマーを簡便に合成する方法として注目されています。


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