磁場勾配強度の校正
はじめに
磁場勾配強度の校正方法にはいくつか種類があります。
1, 水の拡散係数を用いる方法
2, FIDの取り込み時にPFGを照射し,線幅から計算する方法
今回は比較的簡易である,2の方法を解説します。
この作業は測定毎ではなく,半年から一年に一度程度で大丈夫です。
試料,試料管の準備
シゲミ製磁化率マッチング対称形MICRO BMS-005V
今回は5 mmプローブの校正なので,5 mmの試料管を使用しますが,プローブに合わせた径の試料管を用意してください。
D2O
軽水でも可,その分シム調製は難しくなります。
液の高さを5 mmにセットします
通常Single Pulse測定
念のため,温度を25℃に設定し,シム調整を行います。
スピンは完全にオフにします。
液高が低いため,シム調製はかなり難しくなります。
Gradient Shim Toolを使う場合は,
1, Widthを正確に設定する
2, 調製するシムはZ1, Z2のみ,またはZ1~Z3程度にすると計算が収束しやすいようです。
最初に,D2Oを入れた通常の5 mm NMR管でシム調製してから差し替えるのも有効です。
その後通常の
1H 測定を行い,重水中の軽水のシグナルを測定します。
この時のReceiver Gainと軽水のシグナルの化学シフトをメモしておきます。
Experimental Fileの選択
global → diffusion → fg_power_check.ex2
使用するExperimental Fileはこのファイルだけです。
先ほどメモしておいたReceiver Gainを設定します。
測定中心(x_offset)を軽水の化学シフトにします。
取り込み時間は短い方が良い(10 ms程度)ので,
測定範囲(x_sweep)を50 kHz程度に設定します。
取り込みのポイントは512~1024で大丈夫です。
取り込み時間(x_acq_time)が10 ms程度になっているか確認します。
大幅に長ければ,測定範囲とポイント数を適宜設定します。
PFG照射強度(grad_amp)を1 %にします。
FIDの処理と半値幅の計算
必要な処理 1, dc_balance 2, FFT 3, abs
DC Balanceと高速フーリエ変換,絶対値処理を行います。
その後このシグナルの半値幅を読み取ります。
PFG強度の計算
Tools → Math → Gradient Strength
Nucleus 1H (Proton)
Coil length 0.5 cm
Left position "読み取った半値幅"
Right position 0 Hz
値を入力すると自動でそのときの磁場勾配強度が計算されます。
今回は1 %を使用しているので,最大磁場勾配強度はこの100倍になります。
最終的な値は,PFG照射強度を変化させて数点測定した方が良いです。
注意点
1, 試料管にセットした液高を基に計算するため,正確に5 mmに合わせる必要があります。
2, アンプの出力の10 %以下では出力が安定しないため,より正確な校正には水の拡散係数から計算するほうが良いみたいです。
今回は測定核として
1Hを使用しましたが,磁気回転比 γ の関係上,
2Hを測定核にした方が,
より強いPFGを照射してもシグナルが比較的シャープになり,より強いPFGを使うことが出来ます。